技術
七宝焼が完成するまでの工程をご説明します。
本来は、それぞれの工程ごとに担当する職人が
決まっているのが基本です。
しかし、現在は職人のなり手不足から、
一人の作家が全工程を担当することもあり、
太田吉亮もその一人です。
全ての工程を一人が受け持つのは、
多くのコストがかかりますが、
それによって個々の作品に作家個人の感性が
色濃く反映され、
芸術的な完成度が高まるとも言えます。
素地づくり
作品の形状に合わせ、形を作ります。素地には銅板が良く使われます。ひたすら木槌で叩いて理想の曲線を作り上げる、根気と体力のいる作業です。素地が完成したら、次以降の工程のために、下絵を描きます。
植線
ピンセットで形作った銀線を、模様の輪郭に沿って立てていきます。1mmにも満たない銀線の細い部分を、模様の輪郭だけでなく、立てる素地側の曲面も考慮しながら植え付けなければならず、大変繊細で、高度な技術が必要となります。
施釉
「釉薬」という色のついたガラスを、植線された模様に塗っていきます。繊細な水分のコントロールが必要となります。また、たとえば同じ「緑」でも、作品が最も美しく見える緑はどんな緑なのか、熟慮しながら色を重ねていきます。作家の美的感覚が現れる工程です。
焼成
800℃ほどの窯で、10分程度焼きます。窯から出すと、熱を加えたガラス特有の赤い色になります。大変美しいのですが、作品の重さやによっては、割れることもあり、危険も伴うため、作業は真剣勝負です。場合によってはこの工程を何回も繰り返します。
研磨
焼きあがった七宝焼きの表面を磨いてつやを出し、滑らかにします。
特有の美しい光沢は、この作業で生まれます。
ダイヤモンドペーパーを使い、納得のいく質感が出るまで磨き上げます。
覆輪付け
花瓶の場合、口と底の部分に銀のリングを締めることで、より全体が引き締まった美しい見た目になります。これで完成です。